
外国人建設就労者受入事業は、2023年3月に完全に終了した過去の時限措置です。
しかし、現在でも「外国人建設就労者はまだ募集できるのか」「特定技能との違いは何か」といった疑問や、採用ページに古い情報が残ったままになっているケースが少なくありません。
そこで今回は、住宅建築業界のWEB担当者様をサポートするウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)が、制度の正しい位置付けと、現在の採用ルートをどのように整理・発信すべきかを解説します。
「制度終了後の今、どう情報をアップデートし自社の信頼につなげるか」というWEB担当者ならではの視点も含めてまとめていますので、ぜひ最後までご確認ください。
WEB運用や採用広報に関するお悩みをお持ちの住宅業界の企業様・WEB担当者様は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)にお問い合わせください。
「外注に頼らないWEB体制づくり」を目指す企業様・担当者様を全力でサポートいたします。
活動内容を見る目次
外国人建設就労者とは「建設業の人手不足を補うための緊急措置」

外国人建設就労者「特定活動(32号)」とは、すでに完全に終了した過去の在留資格です。
当時の導入背景には、以下の一時的な建設需要の増大がありました。
- 東京オリンピック・パラリンピック(2020年)
- 東日本大震災の復興事業
国が「緊急かつ時限的な措置」として導入した制度であり、恒久的な労働力確保制度ではありません。
外国人建設就労者「特定活動(32号)」の概要
「外国人建設就労者」は、在留資格「特定活動(32号)」として位置付けられています。
主な特徴は以下のとおりです。
- 対象となる職種:とび職・型枠大工・鉄筋施工など、建設現場の技能作業
- 在留期間:2年または3年(更新により最長3年)
- 就労できる場所:建設業の特定作業に限定
- 目的:即戦力となる外国人材を受け入れ、期間限定で現場の負担を軽減すること
制度名としての「外国人建設就労者」は、上記の「特定活動(32号)」を意味します。
しかし、一般的には“建設現場で働く外国人技能者全体”を指す呼び方として使用されることも少なくありません。
この記事では、制度としての「特定活動(32号)」を中心に整理しています。
〈参考〉国土交通省『外国人建設就労者受入事業に関する告示(平成26年国土交通省告示第822号)(令和元年9月13日改正)、外国人建設就労者受入事業に関するガイドライン』
ほかの制度との関係性
外国人材を受け入れる制度には、「技能実習制度」や「特定技能制度」などがあります。
しかし、「外国人建設就労者受入事業」とは目的や仕組みがまったく異なります。
制度の目的や仕組みを正しく理解することは、WEB担当者として採用情報を発信するうえで欠かせません。
制度は年々アップデートされるため、誤った情報を載せてしまうと企業の信頼に関わります。
制度の理解は、特定技能など別制度の情報発信にもそのまま応用可能です。
近年の建設業は人手不足が続いており、今後も深刻な状況になることが見込まれています。
建設業の人手不足の現状については、こちらの記事をご確認ください。
〈関連ページ〉データで見る建設業人手不足の現状|WEB担当者が整えるべき発信について解説
外国人建設就労者と技能実習・特定技能制度の違いを整理

外国人材の制度は複数あり、名前も似ているため混同されやすい傾向です。
しかし、それぞれの目的や立ち位置はまったく異なります。
ここでは、WEB担当者が最低限押さえるべき「外国人建設就労者受入事業」「技能実習制度」「特定技能制度」の違いを簡潔に整理します。
技能実習制度との違い|目的と受け入れ枠の違い
技能実習制度は、「外国人に技能を移転し、母国の発展に役立ててもらう」ことを目的とした国際貢献制度です。
人手不足対策を主な目的とした制度ではなく、あくまでも“技能の移転による国際貢献”が中心です。
一方、外国人建設就労者受入事業は、国内建設業の深刻な人手不足に対応するための制度として導入されました。
それぞれ目的が異なるため、仕組みも大きく違います。
| 比較項目 | 技能実習制度 | 外国人建設就労者受入事業 |
|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献(技能移転) | 国内建設業の人材不足対応 |
| 在留資格 | 技能実習1号〜3号 | 特定活動(32号) |
| 在留期間 | 最長5年 | 2年または3年(更新により最長3年) |
| 転職可否 | 原則不可 | 現場・受入企業が限定的に固定 |
| 対象業務 | 建設含む幅広い分野 | 建設分野の技能作業のみ |
技能実習は同一の実習計画に基づいて行われるため、原則として転籍(転職)は認められていません。
- 技能実習=育成
- 外国人建設就労者=即戦力
それぞれ性格が異なるため、採用情報で混同しないよう注意が必要です。
〈参考〉
・厚生労働省『外国人技能実習制度について』
・国土交通省『建設分野での外国人受け入れ関係』
特定技能制度との違い|時限措置から恒久制度へ
特定技能制度は、2019年に始まった外国人材の恒久的な就労制度です。
建設業を含む複数分野の深刻な人手不足を補うために設けられました。
一定の技能や日本語能力を満たせば働ける仕組みです。
対して、外国人建設就労者受入事業は、復興事業や五輪関連工事の需要増に対応するためだけに設けられた“時限措置”です。
制度自体が2023年3月で完全終了しているため、現在は利用できません。
それぞれの違いは、主に以下のとおりです。
| 比較項目 | 特定技能制度 | 外国人建設就労者受入事業 |
|---|---|---|
| 制度の性格 | 恒久的な就労制度 | 時限的な特例措置 |
| 目的 | 産業分野の慢性的な人手不足対応 | 復興・五輪対応の緊急人材確保 |
| 在留期間 | 1号:最長5年 2号:更新可能 | 2年または3年(更新により最長3年) |
| 対象業務 | 土木・建築・ライフライン設備の3区分(建設分野) | 建設の技能作業に限定 |
| 制度の現状 | 現行の主要制度として運用中 | 2023年3月で完全終了 |
制度移行の設計は「技能実習 → 外国人建設就労者 → 特定技能1号」という流れで、一定の経験を積んだ後に特定技能へ移行する仕組みが用意されていました。
制度の位置付けを把握しておくことで、「現在どの制度を採用できるのか」が判断できます。
次に、今後の採用ルートを確認しましょう。
外国人建設就労者受入事業はいつまでか|制度終了と今後の採用ルート

繰り返しになりますが、外国人建設就労者受入事業はすでに完全に終了しており、現在は利用できません。
しかし、まだこの制度が使えると誤解している企業も存在するため、正確な情報を把握する必要があります。
WEB担当者にとって、最も注意すべき大切なポイントです。
外国人建設就労者受入事業の終了スケジュール
外国人建設就労者受入事業は、以下のスケジュールで段階的に終了しました。
- 新規受入終了:2021年3月31日
- 制度の完全終了:2023年3月31日
そのため、2023年4月1日以降は、在留期間が残っていても「外国人建設就労者受入事業」を根拠とした就労は認められていません。
※制度終了後は、在留資格の更新・延長ができず、制度を根拠とした新規の就労活動は認められません。
WEB担当者として注意したいのは、採用ページや会社案内に「外国人建設就労者を募集中」といった古い情報が残っていないかという点です。
誤った情報は求職者に混乱を与えるだけでなく、企業の信頼性を損なう原因にもなります。
今後の採用ルート|特定技能・永住者・定住者などの在留資格
外国人建設就労者受入事業が終了した現在、建設業で外国人材を採用する場合は、別の在留資格制度を活用する必要があります。
主に利用される制度は以下の3つです。
1. 特定技能制度(1号・2号)
・外国人建設就労者受入事業終了後の主要な恒久制度
・建設業で最も活用されているといえる在留資格
2. 技能実習制度
・国際貢献を目的とした制度で、建設分野でも多くの技能実習生が活躍する
3. 永住者・定住者
・建設業でも就労制限なく働ける
・外国人建設就労者から永住者・定住者になるには、別の要件(婚姻関係、長期滞在実績など)を満たす必要がある
| 在留資格 | 特徴 | 在留期間 |
|---|---|---|
| 特定技能1号 | 恒久制度、転職可能 | 最長5年 |
| 特定技能2号 | 恒久制度、家族帯同可 | 無期限 |
| 技能実習 | 国際貢献が目的 | 最長5年 |
| 永住者・定住者 | 就労制限なし | 無期限 |
採用広報を担当するWEB担当者は、これらの在留資格の違いを正しく理解したうえで情報発信する必要があります。
古い情報を掲載したままにしてしまうと、法令遵守意識の低さを示すことになり、求職者や取引先からの信頼低下につながるおそれもあります。
複雑な制度情報を整理し、現場とWEBの情報発信体制を強化したい企業様は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)にお問い合わせください。
採用・広報・現場管理を一体で考える発信体制づくりをサポートいたします。
セミナー・視察会を見る外国人建設就労者と施工体制台帳・現場管理の基本を押さえる

WEB担当者は現場の書類業務に直接関わらない場合が多いですが、採用情報を発信するうえで基本的な法令や管理体制を理解しておくことが重要です。
ここからは、現場管理の基本がWEB発信にどうつながるかを確認していきましょう。
施工体制台帳・現場入場届出書の提出義務
外国人建設就労者を受け入れていた当時は、「施工体制台帳」と「建設現場入場届出書」の整備が義務付けられていました。
これは国土交通省が外国人材の就労状況を把握し、適正な雇用管理を確保するための仕組みです。
特定技能制度の受け入れでも、同様の届出や確認作業が必要です。
当時の運用ルールを理解しておくことで、今後の情報発信にも役立ちます。
施工体制台帳には、現場で働く技能者全員の以下の情報を記載します。
- 受注者・下請業者の名称、契約内容
- 現場に配置する技能者の氏名・職種
- 外国人の場合:在留資格、在留期間、就労制限の有無
建設現場入場届出書も同様に、現場に入る作業者の情報を整理する書類です。
在留カードに記載された「在留資格」「在留期間」「就労制限欄」の確認は必須で、建設分野で働くことが認められているかを明確にする役割があります。
WEB担当者が理解しておくべき法令遵守・発信ポイント
現場管理の基本を理解しておくことは、そのまま企業の信頼性を高めるWEB発信につながります。
特に外国人材を採用する場合は、以下のポイントをサイト上で明確に示すことが重要です。
適正管理の姿勢
「不法就労は一切認めない」「法令を遵守し、安全な現場運営を徹底している」といった企業の姿勢を、わかりやすく打ち出しましょう。
こうした発信が、求職者や取引先からの信頼獲得につながります。
安全教育と多文化共生への取り組み
外国人材向けの安全教育体制や、日本語学習・生活サポートなどの共生支援を紹介すると効果的です。
単なる法令遵守のアピールではなく、“外国人が働きやすい環境づくり”を行っていることを伝えられ、定着率の向上にも寄与します。
CCUSへの取り組み
特定技能制度の受け入れ要件の一つにもなっている、CCUS(建設キャリアアップシステム:技能者の経験・資格をデジタルで記録し、見える化する仕組み)への登録を積極的に進めていることを発信すると、適正な雇用管理と人材育成に取り組む企業姿勢を示せます。
技能者情報を適切に管理し、透明性を高めている企業としての信頼性向上にもつながります。
法令遵守や安全管理への姿勢を正しく、魅力的に発信できることは、企業ブランドの向上に役立てることも可能です。
次章では、こうした取り組みをどのようにWEB発信へ落とし込むかを具体的に解説します。
外国人材受け入れの情報発信で信頼を高める方法

外国人材の受け入れ制度は更新頻度が高く、古い情報をそのまま掲載すると誤解や炎上の原因になります。
WEB担当者が信頼を損なわないためには、次のポイントを押さえておくと安心です。
- 国交省・法務省など、一次情報へのリンクを必ず掲載する
- 差別的・偏見的に受け取られる表現を避ける
- 「多様な人材が活躍できる職場づくり」を軸に伝える
- 終了した制度は“過去制度”として明確に表記し、現在の採用制度と区別する
- 在留資格・制度名称を正しく表記する
こうした配慮を徹底することで、企業の透明性や誠実さを示すことが可能です。
採用ページやオウンドメディアの信頼度も高まるため、最新情報を正しく整理して発信できるWEB担当者の存在が、企業の信頼を左右するともいえます。
制度の変化を正しく伝え、企業の信頼を守る発信力を身に付けたい方は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)にお問い合わせください。
建設業界特有の法令や採用課題を踏まえたうえで、「実践的に使えるWEB発信力」を磨くサポートをいたします。
協会に加盟するまとめ
外国人建設就労者受入事業の正しい位置付けを理解し、制度終了後の採用ルートや現場管理の基本を踏まえたうえで、企業としてどのように情報を発信すべきかを解説しました。
制度変更が続く建設・住宅業界では、最新情報に基づいた正確なWEB発信が、企業の信頼を守る大きな力になります。
法令理解と情報更新を軸にした、より透明性の高い採用広報を実現していただければ幸いです。