
BIM図面審査は、2026年春から段階的に導入が始まる新しい建築確認の仕組みです。
しかし現場では、「そもそも何から準備すればいいのか分からない」「設計部門だけの話では?」といった声も多く聞かれます。
そこで今回は、住宅建築業界のWEB担当者様をサポートしているウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)が、企業が迷わず準備を進めるための考え方と社内体制づくりのポイントを解説します。
「この変化をどう自社の強みとして発信するか」というWEB担当者ならではの視点も含めた内容ですので、ぜひ最後までご確認ください。
内製化やWEB運用についてお悩みの住宅業界の企業様・WEB担当者様は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)へお気軽にお問い合わせください。
「外注に頼らないWEB体制づくり」を目指す企業様・担当者様を全力でサポートいたします。
活動内容を見る目次
BIM図面審査とは|国土交通省が進める建築確認のデジタル化

BIM(Building Information Modeling:建築情報モデル)図面審査は、従来の2D図面による確認申請に加え、3次元の建物情報を統合したBIMモデルを参照して審査する仕組みです。
国土交通省より段階的に進められ、「図面を読む」から「データとして建物を確認する」流れに移行していきます。
移行スケジュール
国土交通省は、以下の移行スケジュールを明示しています。
| 年度 | 内容 |
|---|---|
| 2025年 | 電子申請の本格化 |
| 2026年春 | BIM図面審査の開始(PDF+BIMモデルを併用) |
| 2029年春 | BIMデータ審査へ段階的移行(モデル中心の審査へ) |
一律に全てを切り替えるのではなく、段階的な対応が行政の方針です。
※国土交通省の公表スケジュールに基づく情報のため、最新情報は公式の発表をご確認ください。
〈参考〉
・国土交通省『建築確認におけるBIM図面審査ガイドライン(素案)』
・国土交通省『BIM図面審査制度説明会資料』
なぜ今、WEB担当・経営者が理解しておく必要があるのか
BIM図面審査は「設計の話」に見えますが、実際には社内全体に関わります。
- 役割分担と責任範囲の明確化
- 外部委託と内製化の線引き
- 図面・モデルの情報管理体制
- 社内の承認フロー設計
さらに、対応できる企業は「BIM対応企業」としての信頼向上や採用での強み訴求につながります。
WEB担当者にとっては、技術変化をブランド力・集客・採用面の魅力として、言語化する役割が生まれる領域です。
BIM図面審査導入の背景|業界で起きている変化

BIM図面審査は、建設業界が抱える課題に対応するために導入が進められています。
ここからは、その「なぜ必要とされているのか」の背景を整理します。
図面とモデルの整合性を担保する必要性
従来の確認申請では、図面間の寸法や記載が一致しない「整合性のずれ」が発生しやすく、修正の手戻りが大きな負担となっていました。
建物情報が平面図・立面図・仕様書など、複数の図面に分散しており、手動で更新していく運用体制が一般的であったためです。
設計・審査の現場における深刻な人手不足
建設業界では、設計担当者や審査担当者の不足が年々深刻化しています。
従来の図面を中心とした確認業務では、担当者の判断や読み取りに依存する場面が多く、作業効率が上がりにくい構造でした。
そのため、国土交通省は担当者の判断に依存しない「作業を効率化する仕組み」へ業務自体を移行させる必要があり、制度改革としてBIM図面審査を位置付けています。
紙・PDF運用による情報管理コストの増大
図面や申請データを紙やPDFで管理する運用では、最新版の把握や保存場所の共有、修正履歴の追跡が難しく、情報管理が属人的になりがちです。
規模の大きな案件ほど「どれが最新か」を確認するだけで時間がかかり、プロジェクト全体の業務負荷の増加につながります。
情報管理をデータ基盤(CDE)に移す必要性は、業界の共通課題となっています。
国土交通省が推進する「確認申請DX」への流れ
国土交通省は行政手続きのデジタル化を推進しており、建築確認についても段階的に「紙→電子→BIMモデル」へ移行する方向性を明確に示しています。
BIM図面審査は、技術トレンドではなく、行政が進める手続き改革の中で位置付けられた取り組みです。
今後の建築業界において対応が求められる重要な制度変化であり、早期に準備を進めることが競争力の維持につながります。
BIM図面審査がもたらすメリット

BIM図面審査は、単に審査方法が変わるだけではなく、設計・管理・共有といった業務プロセス全体に影響します。
ここからは、企業にとって実務上どのような効果が生まれるのかを整理します。
設計品質が向上し、手戻りが減る
BIMモデルを“情報の原本”として扱うことで、図面間の不一致や記載漏れを抑えられます。
更新はモデルに一元化されるため、確認・修正の往復を減らすことが可能です。
設計変更・修正対応がスムーズになる
モデル側の変更が各図面へ自動反映され、修正の抜け漏れを防げます。
設計変更が多い案件でも、反映スピードと再現性を確保できます。
審査機関とのコミュニケーションが明確になる
モデルと図面を同じ対象として参照できるため、指摘箇所の特定が早くなります。
説明の食い違いが減り、往復回数を抑えやすくなります。
プロジェクト全体の進行管理がしやすくなる
変更履歴や進捗がモデルに集約され、関係者が同じ最新情報を共有できます。
管理者は状況把握と承認フローの判断を素早く行えます。
竣工後の維持管理・改修にも使える「資産データ」になる
BIMモデルは点検・修繕・更新のベース情報として長期活用できます。
情報の引き継ぎがしやすく、調査や見積もりの初動を短縮することが可能です。
BIM図面審査ガイドラインの要点|どこを読めば十分か

国土交通省が公開しているBIM図面審査ガイドラインは、範囲が広く、最初から全てを把握するのは現実的ではありません。
まずは、実務でつまずきやすい部分や、審査対応に直結する要点から押さえていくことが大切です。
ガイドラインの構成とまず理解すべき箇所
ガイドラインは大きく分けて、以下のような構成になっています。
- ①BIM図面審査の目的と考え方
- ②提出するデータの形式
- ③モデルと図面の表現基準
- ④審査プロセスの流れ
このうち、初めて確認する段階で重要なのは、①と④の「プロセスの全体像」の部分です。
提出形式や細かな部分を読み込む前に、まずは以下の流れをつかむことが最優先です。
- 「何を提出するのか」
- 「どの順番で確認されるのか」
“仕様”ではなく“考え方”から理解しておくことが、内容を整理する上での重要なポイントになります。
BIM図面審査説明会で示された最新の方向性
2025年7月の説明会では、以下の方針が示されました。
- 当面は全国一律の運用にはしない(自治体ごとの差は前提)
- 重要なのは、自社内で運用ルールを整えられること
- BIMモデルは「提出するファイル」ではなく、審査の対象となる情報として扱われる
ここで特に大切なのは、自治体ごとに運用が異なるのは、制度上の仕組みであるという点です。
実際の運用は自治体や審査機関が行うため、地域によりチェックの観点が変わる可能性があります。
「どこの自治体へ申請するか」によって対応のポイントが変わることを想定し、自社の標準ルールを持っておくことが大切です。
地域差を前提に、自社の標準ルールを先に言語化しておくと、ホームページなどにも「対応方針」として明示できます。
実務での課題と現実的な対応策
BIM図面審査に向けて、多くの企業が迷いやすい点は以下のとおりです。
対応策も含めて確認していきましょう。
| 課題 | 内容 | 対応の方向性 |
|---|---|---|
| 命名規則の不統一 | ファイル名・図番・要素名が統一されない | 社内ルールを先に決める |
| 属性情報のばらつき | 記入方法が人によって異なる | 入力ルールを明文化する |
| 提出データの整理方法 | どのデータをどの階層で保存するか迷う | CDE(※)の設計を先に行う |
※BIM図面審査で使用する申請・審査のためのデータ共有基盤
社内ルールの統一がやりとりの負担を減らし、審査をスムーズにします。
現場がスムーズに回る仕組みづくりをしたい方は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)にお問い合わせください。
各社の体制に合わせた業務フローと運用設計を支援いたします。
セミナー・視察会を見るBIM図面審査に向けて、社内で進めるべき準備

BIM図面審査に取り組むときに、まず意識したいのは社内での役割やルールを整えることです。
ここからは、「無理なく始められる準備」を3つに分けて整理します。
社内の役割を整理する
大切なのは「どの仕事を、誰が担当するか」を先に決めておくことです。
【例】
| 役割 | 主な内容 |
|---|---|
| モデルを作る人 | BIMモデルの作成・修正 |
| 申請の窓口になる人 | 提出物の整理、審査機関とのやりとり |
| 最終決定する人 | 方針・品質の判断、承認 |
担当範囲を明確にし、情報を渡しやすい状態にしておくだけでも、社内での対応が進めやすくなります。
使用システムやデータ管理ルールの整備
BIM対応への準備は、データの置き場と名前の付け方をそろえることが重要です。
たとえば、以下のような基本ルールを社内で共有しましょう。
- どのフォルダに何を入れるかを決める
- ファイル名のつけ方を統一する
- 修正履歴の残し方を決めておく
特別なシステムを入れなくても、現状のクラウドストレージでできる範囲からで問題ありません。
“見れば分かる状態”に統一しておくことが、将来的に大きな業務効率の差につながります。
提出図面・モデルデータのテンプレート化
図面やBIMモデルを毎回ゼロから作り始めると、品質や進め方にばらつきが生まれやすくなります。
そこで、以下のような提出用のテンプレートを用意しておくことが役立ちます。
- 提出図面のひな形
- 属性入力のチェック項目
- ファイル名の例
- 審査前のチェックリスト
このように、「迷わない状態」を先に作っておくことがポイントです。
担当者が変わっても、同じ手順で進められる状態を目指しましょう。
外注と内製化の線引き

BIM対応は、外部のサービス会社に依頼することも可能です。
その際は、外注する部分と自社で判断する部分をあらかじめ分けておくことが大切です。
外注する作業・しない作業の判断
外注しやすいのは、手を動かせば完結する作業です。
一方で、方針や品質の判断が伴う部分は、自社で対応する方が適しています。
【例】
| 区分 | 主な内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 外注しやすい作業 | モデル作成、修正、図面の書式調整 | 作業として切り出しやすい |
| 内製化すべき重要な部分 | 審査機関とのやりとり、最終チェック、提出判断 | 自社の意図や基準が反映される領域 |
判断や基準づくりは社内に残しつつ、作業量の多い部分だけ外部に助けてもらうイメージです。
WEB発信の内製化は“仕組みづくり”から始まる
BIM対応は、そのままWEB上の差別化材料になります。
だからこそ、以下のような「担当者が変わっても続けられる発信ルール」が必要です。
- 発信テーマの整理
- 書き方の型
- 進行ルール など
大きく変える必要はなく、小さな仕組み化からで十分です。
「自己流のWEB運用から脱却したい」「外注ではなく内製で確実な成果を出したい」とお考えの企業様は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)にお問い合わせください。
BIM対応などの技術的な変化を、“集客力につながるWEB発信”へ言語化・内製化する仕組みづくりまで、一貫してサポートいたします。
協会に加盟するまとめ
BIM図面審査の概要と背景、ガイドラインの要点、社内で進めるべき準備とWEB発信への落とし込み方について解説しました。
市場の変化を正しく読み解き、社内の運用ルールとWEB上での「強みの言語化」を両輪で進めることが、顧客への安心と信頼獲得につながります。
今回の内容が、「技術変化を集客力へ転換するWEB体制」の実現につながれば幸いです。