
住宅市場の変化が大きくなっている昨今、「新築物件が売れない」という状況は、住宅業界全体で共有されている課題です。
しかし、「なぜ新築が売れないのか」「WEBでの発信内容をどう変えればいいのか」と具体的な施策に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、住宅建築業界のWEB担当者様をサポートしているウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)が、最新動向を踏まえ、新築なのに売れていない物件を「納得して選ばれる状態」に変えるための、具体的な販売戦略とWEB導線設計を解説します。
最新の販売動向に基づき、WEB担当者が「値下げに頼らず選ばれる仕組み」を構築できる実践的な内容です。
住宅業界で成果を出したいWEB担当者様は、ぜひ最後までご確認ください。
WEB運用・広報戦略に関するお悩みをお持ちの住宅業界の企業様・WEB担当者様は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)へお気軽にご相談ください。
「外注に頼らないWEB体制づくり」を目指す企業様・担当者様を全力でサポートいたします。
活動内容を見る目次
なぜ新築・建売住宅が売れないのか|競合激化で変わった販売環境

近年の住宅市場において「新築が売れない」と言われる背景には、以下のような構造変化があります。
- 需要減少と世帯数の減少
- 建築コストの上昇による価格高騰
- 住宅ローン金利の上昇
- 中古・リノベ市場の拡大による競合増
少子化による世帯数の減少に加え、住宅ローン金利の上昇や建材高騰によって、購入検討者の“買える価格帯”が縮小しました。
その一方で、中古住宅やリノベ物件の人気が高まり、価格・立地・性能を横並びで比較するようになっています。
その結果、今は「新築なら売れる」という前提が通用しなくなりつつあります。
購入検討者は“自分の条件に合うかどうか”を冷静に見ているのです。
2025年以降は、価格競争よりも“選ばれる理由”を明確に示せるかどうかが、販売現場の成果を左右するポイントです。
新築が売れない時代の購入検討者の心理|比較検討がシビアに

現在の住宅購入検討者は、同じ価格帯・同じエリアの住宅を比較することが当たり前になっています。
その理由は、SNS・ポータルサイト・ブログ・比較サイトなど、情報を簡単に集められる環境が整ったことなどが挙げられます。
その中でも注目すべきなのが、“売れ残り期間”を手がかりに物件を評価する行動です。
「売れ残り期間」を手がかりに比較する人が増えている
購入検討者は、まず「なぜこの物件が売れ残っているのか」を自分で判断する傾向にあります。
実際に「建売 売れ残り 半年」「新築 1年以上 未入居」などの関連検索は増加傾向にあり、"売れ残っている理由"を見極めようとする動きが顕著です。
また、ポータルサイト・SNS・見学会など比較に使う情報源が増えたことで、物件は条件ベースで横並びに比較されるようになりました。
購入検討者が絞り込みに使う、主な基準は以下の3つです。
- 価格:周辺相場と比べて割高ではないか
- 立地:生活導線・利便性・環境に課題がないか
- 間取り・設計:自分の暮らし方にフィットするか
つまり購入検討者は、まず「この価格と内容は妥当か」を理解したいのだと想定できます。
そのため、ここが整理されていないと、そもそも比較の土俵に乗れないと言えるのです。
伝えるべき「価格の根拠」
購入検討者は、「安いか高いか」ではなくその価格に納得できる理由を知りたいと考えます。
そのため販売側は、価格そのものではなく価格と価値の関係を先に言語化することが重要です。
- なぜこの仕様になっているのか
- どんな暮らしを前提に設計された家なのか
- 周辺相場と比較してどの立ち位置にあるのか
この「理由と背景」が伝わると、価格は交渉の対象ではなく、価値への納得につながります。
売れない建売住宅の期間別販売戦略

建売住宅の販売戦略は、売れ残り期間に応じて切り替える必要があります。
価格調整、または訴求の再設計が必要になる時期を理解しておくことで、無理な値下げに頼らず“選ばれる状態”をつくることができます。
【売れ残り期間ごとの購入検討者心理と、販売者がすべきこと】
| 売れ残り期間 | 購入検討者の心理 | 販売者がやるべきこと(WEB・営業) |
|---|---|---|
| 半年〜1年 | 「条件次第で検討したい」前向き層 | ・来場導線の整理(LP・ポータル・動線) ・決算・季節キャンペーンで背中を押す |
| 1年以上 | 「なぜ売れ残っているの?」と気になり始める | ・間取り・立地などの懸念点を先に言語化 ・他社との違いを比較情報としてWEB掲載 |
| 2〜3年 | 「他にも良い選択肢があるのでは?」と迷う段階 | ・この家で暮らす価値を中心に魅せ方を再設計 ・暮らしの事例や入居者の声などを情報の補強に活用 |
| 5年以上 | 「何か理由があるのでは…」と警戒されやすい | ・購入検討者が気になる点を先回りして説明し、信頼形成を優先 |
半年〜1年売れ残っている建売住宅|価格調整が始まる段階
販売から半年〜1年の段階は、まだ市場の流通の中にいる状態です。
購入検討者の「条件次第で前向きに検討したい」フェーズ内にあるため、以下のような調整が効果的です。
- 来場導線の整備
- 広告訴求の再調整
- 決算・季節要因に合わせた小規模な値下げ
ここでは、「安くします」ではなく、「なぜ今が買いどきなのか」の理由付けが重要になります。
1年以上未入居の建売住宅|訴求の再設計で対応できる時期
1年以上売れ残っている建売住宅は、価格が原因とは限りません。
多くの場合、「その住宅の魅力が伝わっていない」ことがボトルネックになっています。
立地・採光・間取り・動線設計など、購入検討者が不安に感じやすい点について“なぜその設計になっているのか”という意図をWEB上で丁寧に説明しましょう。
他物件との比較観点を整理したうえで物件の魅力が伝えれば、再検討の対象に戻る可能性が十分にあります。
2〜3年売れ残っている建売住宅|「誰に向いているか」の再定義が必要
2〜3年以上売れ残っている建売住宅は、単なる値下げでは購入検討者の検討の対象になりにくい段階に入っています。
この時期の物件をチェックする購入検討者は、同じ価格帯の他物件を丁寧に比較し、「自分の暮らしに合うかどうか」を慎重に判断している層です。
ここで必要なのは、「周辺より安い」ではなく、「この家でどんな暮らしが実現できるのか」を中心に再設計することです。
売れ残り期間が長い物件ほど、「誰に・なぜフィットするか」を明確にしたターゲット訴求が必要です。
5年以上売れ残っている建売住宅|購入検討者が不安に感じる理由に先回りする
5年以上売れ残っている建売住宅は、購入検討者から「なぜ売れなかったのか?」と警戒されやすい段階です。
このときに必要なのは値下げではなく、購入検討者が不安視しやすい点を販売側から先に示すことです。
たとえば、立地・周辺環境・日照・動線計画・近隣開発予定・インフラ状況など、購入判断に影響するポイントをこちらから丁寧に説明します。
そうすることで、購入検討者は“売れ残った理由を理解したうえで比較検討できる”状態に変わります。
大幅な値下げは、安心ではなく不信感につながりかねません。(例:隠れた欠陥があるのではないか、販売管理に問題があったのではないか、など)
「安くします」というアプローチではなく、不安に対する回答をそろえることで、価格ではない「安心感」で選ばれる可能性が生まれます。
販売戦略と連動したWEB発信の設計力を高めたい方は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)へお問い合わせください。
市場データを活かした戦略的な情報発信をサポートいたします。
セミナー・視察会を見る値下げ待ちは、価格への納得不足

購入検討者の「売れていないなら値下げされるのでは?」という疑問の背景にあるのは、単なる値引き交渉の意欲だけではありません。
本質的に考えられるのは、価格に対する納得感の不足です。
新築が売れないときに求められる「価格の根拠」の示し方
購入検討者は、価格の妥当性を確かめる傾向にあると説明しました。
ここで価格の根拠が説明できないと、「相場より高いのでは?」という印象だけが残り、検討から外れてしまうこともあります。
そこで、WEB発信や資料では “価格が成立する理由” を以下の4つの観点で明示することが重要です。
| 比較されるポイント | WEB・資料で示すべき内容 |
|---|---|
| 住宅性能(断熱・耐震など) | 数値・等級・仕様書を比較できる形で提示 (例:ZEHや耐震等級3、長期優良住宅など) |
| 素材・設備のグレード | 採用理由とグレード (例:無垢床の含水率や樹脂サッシ、換気方式の違いなど) |
| 設計思想・暮らし提案 | 想定する暮らし像 (例:共働き×回遊動線、在宅ワーク×音配慮など) |
| アフターサポート | 保証・点検・施工体制を明確に記載 |
これらを整理して掲載することで、「価格が高いか安いか」ではなく「理由のある価格」として受け止められます。
2年以上売れない新築物件を値引きするときの伝え方
販売から長く売れていない物件の値引きは、「商品価値を下げた行為」に見せないことが重要です。
たとえば、商品価値を下げないために、以下のような伝え方が有効です。
- 「保守・在庫維持コストが発生する時期のため、価格条件を調整できます」
- 「決算(または期末)に合わせて、販売条件を最適化できます」
こうすることで、“値下げ=ただの安売り”ではなく、戦略的な調整があって値引きされたと伝わります。
新築が売れないときは、値下げではなく『導線設計』で差別化する

新築物件が売れない時代では、WEB発信を起点とした「来場までの導線設計」が成約率を大きく左右します。
具体的に、どのように導線を設計するべきなのかを見ていきましょう。
来場までの導線を一本のストーリーに
購入検討者は、複数の媒体で情報を収集しています。
そのため、以下の情報には、本来「同じメッセージ」が流れている必要があります。
- 物件LP(ランディングページ)
- ポータルサイト掲載文
- 内覧時の案内
- 営業トーク
しかし多くの住宅会社では、これらが担当者や媒体ごとにバラバラになり、購入検討者が情報の一貫性を感じられないことも少なくありません。
購入検討者は、比較検討の途中で「よく分からない」と感じた瞬間に候補から外してしまう傾向があります。
つまり、情報がつながっていないだけで、機会損失が発生しているということです。
重要なのは、来場予約までにたどり着く情報が「一本のストーリーとしてつながっていること」なのです。
比較ポイントを言語化することで物件の魅力が伝わる
価格競争から脱却するためには、単なる機能説明ではなく、納得につながる見せ方を徹底することが不可欠です。
そのために整理すべき比較軸は、主に以下の3つです。
| 比較軸 | 例 | WEBでの見せ方 |
|---|---|---|
| 機能価値 | 断熱性能、耐震性、設計寸法、使用資材など | 数値そのものではなく、その機能が「暮らしの中でどう効くのか」を説明する (例:冬の光熱費シミュレーションなど) |
| 使用価値 | 生活動線、家事効率、収納プラン、間取りの快適性など | 入居者事例やルームツアー動画を通じて、具体的な「体験イメージ」を可視化する |
| 情緒価値 | ブランド理念、施工への姿勢、デザイン哲学、地域への思いなど | ストーリー、施工の裏側の公開、代表メッセージなどで「誰がつくっているか」を伝え、信頼感を形成する |
この3軸を明確に言語化できると、販売活動は「価格競争」から「価値の提案」へと転換します。
内製化は「型」をつくることが重要
WEB担当者が変わるたびに成果が上下するのは、運用が“担当者の勘と経験”に依存しているからです。
内製化で大切なのは、誰が担当しても同じ成果が再現できる「型(仕組み)」をつくることです。
その「型」は、次の3つをそろえることで成立します。
| 型の要素 | 役割(目的) | 例 |
|---|---|---|
| 情報設計 | 伝えるべき核を決める | 強みや比較軸、価格の根拠の言語化・体系化 |
| 導線設計 | どう理解・納得へ導くかを決める | SNS→サイト→来場予約のストーリー設計 |
| 運用テンプレ | どう更新・改善するかを標準化する | 投稿テンプレ・掲載文テンプレ・営業トーク連携 |
難しい技術は必要なく、「判断を個人に任せない仕組み」をつくることが、内製化の本質です。
内製化の仕組みづくりを基礎から身につけたい方は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)へお問い合わせください。
誰が担当しても再現できる「型」を軸にした、実務に根ざしたWEB運用をサポートいたします。
協会に加盟するまとめ
売れない新築物件を「納得して選ばれる」状態に変えるための販売戦略と、WEB発信を起点とした導線設計について解説しました。
販売期間に応じた戦略の切り替えと、価格の根拠を言語化する力が、これからの販売現場を支えます。
今回の情報が、市場構造の変化を正しく読み解き、「根拠ある販売戦略とWEB発信」の実現につながれば幸いです。