
今、建設・建築業界は、いくつもの問題を抱えており、生産性の向上は急務を要する課題です。
そこで、国土交通省を中心に推進しているのが「建設DX」で、ゼネコンや組織設計事務所などの大企業だけではなく、工務店や地元のハウスメーカーなどの中小企業にまでデジタル化の波が迫っています。
今回は、住宅・建築業界のWEB担当者育成をサポートするウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)が、日本の建築・建設業界が抱える問題とその解決策として取り組まれている「建設DX」の具体例を詳しく解説します。
自社にDXを導入する場合のフローやポイントについてもお話ししますので、ぜひ最後までご覧ください。
WEB運用や集客に関するお悩みをお持ちの住宅業界の企業様・WEB担当者様は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)にお問い合わせください。
「外注に頼らないWEB体制づくり」を目指す企業様・担当者様を全力でサポートいたします。
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日本の建設・建築業界が抱える問題

2025年度の建設投資額は75兆5,700億円と、バブル景気の頃と同水準まで上昇する見通しで、例年、建築・建設業は国内GDPの10〜12%を占める重要な業界です。

〈参考:e-stat政府統計の窓口案内|建設投資見通し2025年度見通しのデータを基に弊社にて作成〉
このデータだけを見ると、建築・建設業界は好調のように見えますが、就業者数は最も建設投資額が多かった1990年よりも約30%も少なく、人手不足が顕著です。
2025年上半期(1〜6月)に、建築・建設業界における人手不足倒産は2年連続で過去最多の記録を更新したというデータもあるほどです。
このように、中小企業を中心に人手不足倒産に及ぶ主な原因は4つあります。
就業者の高齢化・若者離れ
建築就業者は、55歳以上が35.9%、29歳以下が11.7%と、高齢化・若者離れが深刻です。
他の業種と比べてこの傾向が強く、就業者割合の25.7%を占める60歳以上の人材が今後10〜15年後に一斉離職することが想定されるため、若者の囲い込みは急務とされています。
〈参考〉:国土交通省|建設業を巡る現状と課題
このまま高齢化・若者離れが進むと、事業や技術の継承が難しくなることは避けられません。
〈関連ページ〉データで見る建設業人手不足の現状|WEB担当者が整えるべき発信について解説
働き方改革による時間外労働の制限
2018年に制定された「働き方関連法」の施行以降、事業者に就業者の時間外労働是正や年5日の年次有給休暇の付与義務が課せられました。
建築・建設業界には、急な混乱を避けるために義務の適用まで猶予期間が与えられましたが、それが終了した2024年から、人手不足が深刻です。
働き方改革により、建築業界のブラックなイメージは払拭されつつありますが、就業者の労働時間は他産業よりも高水準で、年間の平均労働時間は全産業よりも68時間多いことから、どの会社も働き手が足りていません。
生産性の低さ
建設業は、昔から3K「きつい・汚い・危険」と呼ばれており、他の産業と比べても生産性が低いとされてきました。
国土交通省では、公共工事において建設業の新3K「給与・休暇・希望」を実現するための取り組みを行っていますが、民間事業までには浸透していません。
未だに建設業の付加価値労働生産性※は、3,016円と全産業平均の4,678円を大きく下回ります。
※付加価値労働生産性:労働者あたりが生み出す付加価値(≒収益)を示す指標で、「付加価値額 ÷ 労働量(従業員数もしくは労働時間)」で算出する
〈参考〉一般社団法人日本建設業連合会|建設業デジタルハンドブック|生産性と技術開発
建設業における生産性の低さは、慢性的な人材不足と、属人的な技術の多さが原因と言われています。
現場主義の常態化
日本の建設現場はまだまだ現場主義が根強く、施工員だけではなく、監理に就く建築士も現場に通わなくてはいけないのが実情です。
実際に、国土交通省が行った業種別のテレワーク導入率を見ると、建設業は26.4%にとどまっています。
〈参考〉国土交通省|令和5年度テレワーク人口実態調査-調査結果-
このように、建築・建設業界では「現場に行かないと仕事にならない」構造が残っており、それが入職者のハードルになっている可能性も考えられます。
〈関連ページ〉2025年の工務店数の推移が示す住宅業界の動向|着工戸数が減る市場での生き残りに求められること
建設DXとは|人手不足の解決策

建築・建設業界が抱える深刻で慢性的な人手不足を解決する糸口として国土交通省が進めている取り組みが「DX」です。
DXとは、デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称で、デジタル技術を活用し、業務プロセスやビジネスモデル、業界の文化・風潮を根本的に変えていく取り組み全般を指します。
取り組みの具体例
建物にかかわる各段階で以下のような取り組みが実行されています。
| 作業段階 | 具体的な取り組み |
|---|---|
| 測量・現地調査 | 【ドローン・WEBカメラ】 ・遠隔地からの敷地調査 ・測量の省人化や自動化 【BIM/CIM※】 ・地形の3Dモデルデータ化 |
| 企画・設計 | 【BIM/CIM】 ・設計作業の効率化(パース作成・日影シミュレーション・人為的ミスの防止など) ・効果的なプレゼン資料の作成(パース・VR・動画など) ・建築確認申請のデジタル化(申請者・審査者双方の効率化) 【AI技術】 ・企画案の自動生成 ・法令チェックの省人化 ・建築確認申請における重要項目の記入漏れチェック |
| 現場監理 | 【ドローン・WEBカメラ】 ・遠隔地からの現場確認や点検作業 ・危険な場所の現場確認や点検作業 【BIM/CIM】 ・効率的なプランや施工計画の修正(1つの図面を修正すると、それと紐づく別の図面も更新される) 【AI技術】 ・配筋検査の自動化 ・工程や資材の最適化シミュレーション(無駄の削減) |
| 施工 | 【ドローン・WEBカメラ】 ・狭い場所や高所、危険な場所への資材運搬 【BIM/CIM】 ・建物にかかわるデータの蓄積(引き渡し後も資産になる) 【AI技術】 ・施工ロボットによる現場の状況把握と自動施工 【ICT※・IoT※技術】 ・ICT建機の導入による省力化 |
| 建物運用・維持保全 | 【ドローン・WEBカメラ】 ・建物の管理や点検における省人化 【AI技術】 ・建物の仕様や改修履歴を踏まえた、長期修繕計画の最適化 【ICT※・IoT※技術】 ・家電や設備機器の自動制御(防犯・省エネにおいて有利) |
※BIM/CIM:BIMは「Building Information Modeling(建築分野)」、CIMは「Construction Information Modeling(土木分野)」の略称で、設計施工にかかわる多様なデータ(寸法・仕様・性能・デザインなど)を1つのシステムで一元管理できる仕組みで、CADに替わって導入が進められている
※ICT:Information and Communication Technologyの略称で、インターネットなど情報通信技術を指す
※IoT:「Internet of Things(モノのインターネット)」の略称で、建築においては重機や各種センサー、設備機器などとインターネットを接続させて、情報共有するための技術を指す
これらDXの取り組みにより、設計・施工・建物運用における生産性や効率性が上がり、限られた人数でも品質を保つことが可能になります。
DXの取り組みは、ゼネコンなど大規模な建築プロジェクトを手がける企業にとどまらず、住宅中心の工務店やハウスメーカー、リノベーション会社などにも浸透し始めており、実際に2026年度からBIM/CIMによる建築確認がスタートする予定です。
〈参考〉国土交通省|2026年春、建築確認におけるBIM図面審査を開始!
〈関連ページ〉BIM図面審査ガイドラインの要点|確認申請に向けた運用ルールと体制づくり
i-constructionとの違い
国土交通省が建設DXと合わせて推し進めているのが、i-constructionの普及です。
i-constructionとは、ICT技術の活用によって、主に建設現場の生産性向上を図るための取り組みを指します。
建設DXは、BIMやAI、ドローンなど、多様なIT技術を総合的に活用する施策であるのに対して、i-constructionはあくまでもICT技術を取り入れた建設技術のみを指すのが一般的です。
日本で建設DXは進んでいるのか|普及しない理由

日本は、先進諸外国と比べて建設・建設業界のDXが進んでいないと言われています。
例えば、国土交通省の調査では、日本国内のBIM導入率は全体で58.7%にまで到達しましたが、既にアメリカでは約70%、イギリス・ドイツ・フランスなどでは約80%に達しており、後れをとっている点は否めません。
〈参考〉国土交通省|建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査<概要>(令和7年1月国土交通省調べ)
また、国内における建築関連のAI技術も、開発途上です。
日本で建設DXが進まない主な理由として、以下の点が挙げられます。
- DXのメリットを知らないため
- 慢性的な人手不足で、新たな技術について学習する時間を取れないため
- 現状、問題なく業務を行えているため
- 発注者・協力会社等からDXを求められていないため
- 他の同規模同業者がDXを進めていないため
- 業務にDXを導入した場合、習熟するまで業務負担が大きいため
- BIMやAIなどの技術を活用できる人材がいないため(もしくは、育成・雇用に費用がかかるため)
- 費用対効果がわからないため(投資費用を超える生産性向上効果を得られるか確信がないため)
- 社内のDXを進めるために、何から始めればよいかわからないため
- BIMのソフト等の購入・維持に高額な費用がかかるため
〈参考〉国土交通省|建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査<概要>(令和7年1月国土交通省調べ)
建築・建設業界にDXは必要不可欠であるものの、そのメリットが業界全体まで浸透しておらず、人手不足により着手できない企業が多いのが実情です。
この悪循環こそ、日本の建築・建設業界DXが遅れている原因と言えます。
この現状を打破するためには、会社の規模を問わず、DXへの理解を含め、近い将来に待ち受けるさらなる深刻な人材不足に備え、設備投資や求人活動などの先行投資をしておく必要があります。
活動内容を見る セミナー・視察会を見る 協会に加盟する工務店・設計事務所のDX導入フロー

小中規模の工務店様や設計事務所様が社内のDXを進めるためには、段階的な導入が必要です。
現状の問題・課題をリストアップする
まずは、現状、業務で抱える問題や課題、非効率な部分をリストアップしましょう。
現状把握により、どのデジタル技術から採用すべきかが見えてきて、それに必要な人的リソースや投資費用をシミュレーションすることが可能です。
業務フローを見直す
各種デジタル技術の採用を仮定して、どのように業務フローを変えられるか検討しましょう。
場合によっては、DXによる省人化や効率化によって、人員配置の変更が必要な可能性もあります。
必要な人材を育成・求人する
DXを成功させるためには、それぞれの技術に特化した人材が必要です。
今いる社員の教育と並行して、将来に向けたIT人材の採用を進めましょう。
IT人材を採用するためには、業務環境や待遇の見直し、明確な社内評価制度・キャリアパスの設定などが重要になります。
案件を限定して導入する
全案件を一斉にDXすることは、間違いなく業務に混乱やミスを招きます。
そのため、工務店様や設計事務所様の場合は、一部の案件に限定して試験的にDXを進める方法がおすすめです。
例えば、設計業務をCADからBIMに切り替える場合は、BIMデータの作成を外注し、実際のデータを使いながら社内でOJT※研修する方法もあります。
※OJT:「On-the-Job Training」の略称で、実務を通して知識や技術、ノウハウを実践的に学ぶ人材育成方法
まず、一部の案件についてDXを進めると、本格導入の前に新たな改善点が見えてきます。
業務フローを見直す
社内業務を部分的にDX化すると、多くの場合、当初シミュレーションしていた業務フローとのギャップや新たな問題点・課題が見つかります。
その問題や課題を踏まえて、業務フローを改善しましょう。
ブラッシュアップを繰り返すと、より精度の高い業務体制が整います。
DXを本格導入する
主な社員がDXのメリットや具体的な業務フローを把握できたら、各種システムを本格導入しましょう。
実際にシステムの運用を始めると、社員から「こんなツールがあるとさらに生産性が上がる」「ここのコミュニケーションをもっと密にした方がいい」などの要望や意見が上がってくる可能性があります。
その場合は、柔軟に業務フローを更新し、よりデジタル技術を活用した生産性向上を目指しましょう。
継続的な業務体制の見直し
DXにかかわる技術は、まだ発展途上で進化し続けており、毎年新たなサービスやシステムが誕生しています。
そのため、ある程度社内DXが完了しても、継続的な業務体制の見直しが必要になる可能性があります。
そのため、今後も業界の波に乗り、企業の持続可能性を高めるためには、デジタル技術に長けたIT人材の確保が欠かせません。
工務店・設計事務所が生き残る鍵は「IT人材の確保」にあり

社内のDXを進めるためには、デジタル技術に詳しいIT人材が必要です。
逆に言うと、IT人材がいなければDXはなかなか進みません。
しかし、建築・建設業界に特化したIT人材は不足しており、大企業でもその採用に苦戦しているのが現状です。
また、若年層の人口減少によって、2019年以降はIT関連産業への入職者が退職者を下回り、総就業者数は減少に転じるとも言われています。
〈参考〉経済産業省|参考資料(IT人材育成の状況等について)
そのため、会社の規模を問わず、早いうちからIT人材の確保に取り組む必要があり、それこそ、今後工務店様・設計事務所様などの中小企業が生き残る“鍵”と言っても過言ではありません。
最近は、BIMオペレーターやBIMマネージャーを積極的に採用する企業が急増しており、争奪戦になっている現状もあります。
IT人材を確保するためには、以下の取り組みを実施しましょう。
- 自社独自の求人サイト(ページ)の開設
- 自社の理念やコンセプトを伝えるためのLP※作成
- 既存ホームページのリニューアル(デザイン・構成の見直し)
- SEO※・MEO※のための施策
- SNSアカウントの運用
- WEB広告の運用
※LP:ランディングページ(Landing Page)の略称で、WEB広告・検索結果・SNSなどを経由して訪問者が最初にアクセスするページ
※SEO:Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)の略称で、Googleなどの検索エンジンで自社のホームページを上位表示させるための施策全般
※MEO:Map Engine Optimization(マップエンジン最適化)の略称で、Googleマップなどの地図検索で自社の情報を上位表示させるための施策全般
ただし、これらの作業を効果的にこなすためには、WEBなどに関する深い知識とノウハウが必要です。
建築・建設業界の企業様で「社内で優秀なWEB担当者を育てたい」「WEBマーケティングを外注に丸投げせず、自社でできることに取り組みたい」という方は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)へお問い合わせください。
住宅・建築業界に特化し、イベント運用とWEB集客をつなげるための考え方や体制づくりをサポートいたします。
〈関連ページ〉【住宅・建築業界】WEB担当者に向いている人の特徴|スキルなし未経験でも成果を出すステップ
活動内容を見る セミナー・視察会を見る 協会に加盟するまとめ
日本の建築・建設業界は、慢性的な人手不足を抱えており、今後、それがより深刻化することはほぼ確実です。
そこで企業に求められるのがDXであり、デジタル技術を通じて生産性向上と省人化を実現できます。
ただし、社内のDXを進めるためには、IT人材の確保が不可欠であり、そのためにはホームページやSNSを使ったWEB採用が欠かせません。
IT人材の確保を進めたい企業様は、まず自社でWEB担当者を育成するところから始める方法をおすすめします。
今回の内容が、建築・住宅業界の中小企業様における求人の悩みを改善するきっかけになれば幸いです。