
建設業の人手不足については大きな課題として語られる一方、SNSでは「嘘では?」「大げさだ」といった誤解も広がっています。
また、採用ページの情報が不足している企業も多く、求職者とのミスマッチにつながりやすい状況です。
そこで今回は、住宅建築業界のWEB担当者を支援するウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)が、人手不足の実態と誤解の背景を整理し、企業がどのように情報を更新・発信すべきかを解説します。
自社の採用ページの改善に役立つ、WEB担当者ならではの視点も含めてまとめていますので、ぜひご確認ください。
採用やWEB運用に関するお悩みをお持ちの住宅業界の企業様・WEB担当者様は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)にお問い合わせください。
「外注に頼らないWEB体制づくり」を目指す企業様・担当者様を全力でサポートいたします。
活動内容を見る目次
建設業の人手不足は本当か|「嘘」と言われる背景と実態

建設業界では長年「人手不足」が課題として取り上げられる一方、「実際は嘘ではないか」「騒ぎすぎではないか」という声も見られます。
ここからは、そうした意見が生まれる背景を整理しながら、実態とのギャップをわかりやすく説明します。
「人手不足は嘘」と言われる理由|SNSで広がる誤解
SNSでは「建設業は本当は人手不足ではない」といった投稿も見られます。
これらの誤解が広がる大きな原因は、現場の忙しさと採用サイトの情報不足とのギャップにあると言えます。
主に以下の点が、誤解を生む要因です。
- 採用ページに仕事内容・待遇などの情報が少ない
- 給与・休日・働き方が不明瞭
- 本気で採用しているのか外から判断できない
- 大手には応募が集まるため「人はいるのに雇わないだけ」に見える
求職者からすると、「本当に人手不足なら、もっと積極的に情報を出すはずでは?」という疑問が生まれます。
この違和感が「人手不足は誇張なのでは」という誤解につながっているのです。
「当たり前」「自業自得」と指摘される業界構造
「当たり前」「自業自得」と厳しく指摘される背景には、建設業が長く抱えてきた構造的な課題があります。
主に以下の点が指摘の中心です。
- 高齢化の進行:
55歳以上の比率が高く、若手の補充が追いついていない - 若者が敬遠しやすい労働環境:
長時間労働の歴史や休日の取りにくさ、収入の見通しが不透明 - 教育・育成体制の弱さ:
ベテランへの依存が大きく、組織として若手を育てる仕組みが整いにくい - 魅力発信の不足:
現場の雰囲気・社員の声・キャリアの見通しといった応募に必要な情報が見えづらい
こうした積み重ねにより、「人手不足になるのは当然」という批判が出やすくなっていると考えられます。
国土交通省のデータで見る建設業界の現状と将来予測

建設業の人材不足は、国の統計でも明確に示されています。
この章では、総務省や国土交通省、厚生労働省などの情報をもとに、就業者の年齢構成や制度の変化などの現状、今後10年の見通しを整理します。
建設業の就業者数・高齢化・離職率の推移
総務省統計局の「労働力調査」によると、建設業の就業者数は1997年の約685万人をピークに減少が続き、2024年には約477万人まで減少しています。
特に深刻なのが年齢構成の偏りです。

国土交通省の「建設業を巡る現状と課題」のデータによると、就業者の年齢分布には以下の特徴があります。
- 55歳以上が3割以上を占めている
- 29歳以下の若年層は約1割前後にとどまっている
高齢化が他産業より大きく進んでおり、世代の入れ替わりが十分に進んでいません。
また、厚生労働省の「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」では、建設業の新規高卒3年以内の離職率は約40%で、全産業平均(約35%)を上回っています。
「人手不足は嘘」という意見とは逆に、データ上では確実に労働力が細りつつあることがわかるのです。
〈参考〉
・e-Stat政府統計の総合窓口『労働力調査>結果の概要>主な産業別就業者数、長期時系列データ>第10回改定日本標準産業分類別就業者』
・国土交通省『第25回基本問題小委員会配付資料>建設業を巡る現状と課題』
・厚生労働省『新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します』令和7年10月発表
外国人建設就労者受入事業の終了の影響
国が実施していた「外国人建設就労者受入事業」は、2023年3月で完全終了となりました。
東京オリンピックや復興需要に対応するための時限的制度でしたが、制度終了後は「特定技能」へ一本化されてます。
技能者不足のなかで外国人材に支えられていた現場も多く、制度の移行によって採用ハードルや手続きが重くなった企業もあります。
結果として人材確保の選択肢が狭まり、人手不足に拍車をかけた地域も少なくありません。
外国人建設就労者についての詳細は、こちらの記事をご確認ください。
〈関連ページ〉外国人建設就労者とは|WEB担当者が知るべき特定技能との違い・雇用のポイント
〈参考〉国土交通省『外国人建設就労者受入事業に関する告示(平成26年国土交通省告示第822号)(令和元年9月13日改正)、外国人建設就労者受入事業に関するガイドライン』
今後10年でさらに人材不足の加速が見込まれる
国土交通省の予測では、建設技能労働者数は5年ごとに約7〜8%ずつ減少し、その減少率は徐々に大きくなると見込まれています。
しかし、その年代を補う若手の入職は依然として伸びていません。
そのため、今後10年で人材不足が加速する可能性は極めて高いと言えます。
〈参考〉国土交通省『「令和7年版国土交通白書」を公表します。>令和7年版国土交通白書 概要』
建設業が人手不足に陥る本当の理由

ここまで見てきた統計データや業界への厳しい指摘を踏まえて、建設業が人手不足に陥っている本当の理由を整理していきます。
若手が入らない・定着しない構造的問題
若手が入らず、入っても定着しにくい背景には、以下のような構造的な課題があります。
- 専門技能の習得に時間がかかる
- 将来のキャリアが描きにくい
- 教育が個人任せで、体系的な育成が難しい
これらが入職時の不安につながり、現場の忙しさからフォローしきれない会社も少なくありません。
その結果、入社直後にギャップを感じて離職するケースが目立ちます。
このような状況が続くことで、若年層が他業界へ流れ、世代交代が進まない悪循環が生まれています。
採用市場の激化と求職者の価値観変化
建設業は他業界と比べても採用競争が厳しく、求職者の価値観の変化も影響しています。
- 働き方・休日・福利厚生の重視が強まっている
- IT業界・物流・介護など「未経験可」の選択肢が急増
- 肉体的負担のある仕事を避ける若年層が増加
特に中小企業では、待遇や教育体制で大手企業に見劣りしてしまうケースが多く、建設業界そのものが「入りにくい業界」と見られやすい状況です。
建設業の人手不足をどう解決するか|企業が取るべき解決策

人手不足は「構造的な課題」ですが、企業の取り組み次第で改善できる部分も多くあります。
ここからは、働き方・教育体制の見直しに加えて、採用力を高めるための“情報発信”という視点から解決策を整理します。
働き方・教育・採用フローの見直し
人材を確保するには、働き方・育成・採用プロセスを一貫して整えることが欠かせません。
特に以下の4点が改善の軸になります。
- 労働時間や業務負担の見直し
- 入社後の成長イメージを可視化する仕組みづくり
- 現場見学や社員との対話など、入社前後の疑問を解消する採用設計
- 個人任せにしない教育の標準化
これらを整えることで、「応募はあるのに続かない」という状態の改善が期待でき、定着しやすい環境づくりにつながります。
“選びたくなる企業”になるための情報発信と魅力づくり
応募を増やすためには、待遇だけでなく「どんな現場で、どんな価値観の会社なのか」を丁寧に伝えることが欠かせません。
そのためには、以下を土台にした情報発信が重要です。
- 会社の理念や働き方のスタンスを言語化する
- 入社後の働き方やキャリアのイメージが湧く説明を載せる
- 働き方・教育制度・評価方法など、安心につながる情報をわかりやすく公開する
- 求職者の視点で必要な情報を整理し、疑問を解消する構成にする
「この会社なら自分がどんな未来を描けるか」が伝わると、求職者の不安が減り、自然と“選びたくなる企業”として認識されていきます。
採用コンテンツの改善や情報発信の組み立て方に悩んでいる企業様は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)にお問い合わせください。
現場に根付く発信の型づくりや、求職者に伝わるWEB改善のポイントを丁寧にサポートしています。
セミナー・視察会を見る未経験でも成果を出せるWEB運用|採用と集客につながる基礎施策

WEB運用で成果を出すために大切なのは、難しい施策ではなく「基礎の徹底」です。
中でも、未経験のWEB担当者でも取り組みやすいのが、以下2つの充実です。
- 施工事例紹介
- スタッフ紹介
求職者も施主も知りたいのは、「どんな現場で、誰が働いているのか」というリアルな情報です。
また、SNSやブログの継続更新も有効です。
頻度より“続けること”が重要で、現場写真1枚でも立派な情報発信になります。
更新が途切れない会社は、それだけで信頼につながります。
現場と人の魅力をコツコツ発信することが、採用と集客のどちらにも効く施策になるのです。
WEB担当者の育成・内製化が人手不足対策の近道

外注だけに頼る体制では、更新が止まったり改善が進まなかったりと、発信が続けにくいという課題があります。
ノウハウが社内に残らないため、採用や集客の成果を再現しづらい点も問題です。
人手不足が続く今こそ、社内でWEBを運用できる体制づくりが大切です。
基礎を理解した担当者がいれば、日々の更新が滞らず、自社の発信力を長期的に高めることができます。
外注に頼らず、自社でWEB発信を強化したい企業様は、ウェブタン(住宅建築WEB担当者育成協会)にお問い合わせください。
コミュニティや交流会を活用し、現場で継続できる実務的な発信体制づくりを丁寧にサポートいたします。
協会に加盟するまとめ
建設業の人手不足が“誤解”として語られやすい背景から、国土交通省データに基づく実態、企業として取り組むべき発信内容を解説しました。
情報が錯綜しやすい今こそ、最新データを踏まえた丁寧なWEB発信が、企業への信頼や採用力を大きく左右します。
働き方・教育・採用フローの改善と、透明性の高い情報公開を軸に、自社の魅力を適切に届けるWEB体制づくりにぜひ役立てていただければ幸いです。